2020年09月20日

シン・ニホン

『シン・ニホン』安宅和人著 副題は“AI×データ時代における日本の再生と人材育成”。今年のベストセラー本のひとつ。

内容は副題にある通り。かつての技術立国日本、いまはどうかというと、AI×データの重要度が一層高まるこれからの時代において、他の先進国に大きく後れをとるどころか、人材育成もままならず、このままでは完全に取り残される格好となることがファクトベースで示されている。そして、そのための対策として教育をどうするべきか、国策としてどうしていくべきか、といったことが書かれている。

生物化学の研究者、マッキンゼーのコンサルタントといった経歴を持ちながら、慶応の教授、ヤフーのCSOとして活躍されている気鋭の方。一方で、国の産業振興・教育関係の政策策定への提言をされている。「一人産・官・学」と自ら書かれているが、八面六臂の活躍をされていることがうかがえる。日本のこれからの産業振興、教育に関する事々が政策としてなされていくうえで、少しでもこの方が書かれているような方向で動いていけばよいように思う。

主要な論旨はそれとして、幾か所か面白いな、と感じるところがあった。
一つは、「仕事とはなにか」という問いをした場合、どう答えるか、という一文。

“実は「仕事」の定義については、社会科ではなく、中3か高1ぐらいの理科で基本的に全員が習う。そう

仕事=力×距離

だ。単なる努力、試み自体には意味がなく自己満足、浪費にすぎない。生み出す変化がなければゼロ、完遂されない仕事は意味の持ちようがないということだ・・・”

”なお、同じく古典力学的には「力」の大きさは[質量×加速度]で計算できる。すなわち生み出す仕事の大きさは、「どれだけ大きな存在に対して、どれだけ勢いよく、どれだけの変化(距離)を引き起こしたか」だ。現実世界における仕事の定義として考えても十分に味わい深い”

これも一つの考え方にすぎないといえばそれまでだが、領域横断的に活躍されている著者ならではの考え方であり、なるほどこういう視点もあるんだな、と思えた。

あと、本書の締めの章。それまでの論調とは明らかに感じが違う、転調したような章になっている。

“・・・今、データ×AIや、それ以外にも数多くのこれまででは不可能だったことを可能にする技術が一気に花開いているが、これらはそもそも人間を解放するためにあるのではないのか。テクノロジーの力を使い倒すことにより、僕らはもっと自然と共に生きる美しい未来を創ることはできないのか?そうだ!「風の谷」だ!”

著者は参加したあるイベントのなかで内省する機会があった際に、こういう考えが降りてきたそうだ。
実際に「風の谷憲章」をつくり、仲間と共に廃村のような場所で理想の「風の谷」をつくるべく活動をされているようだ。著者の言う「風の谷」は「風の谷のナウシカ」にでてくる「風の谷」。

”このままのトレンドが続けば、都市型の未来しか選択肢はなくなり、都市がコモディティ化することはほぼ確実だ。スマートシティという言葉があるが、都市がスマートなのは当たり前だ。今僕らに問われているのは、むしろスマートで豊かなカントリー的空間を作れるかどうかだ。
単なる荒れ地でもジャングルでもなく、人が自然と融和できる豊かな空間を持てるかどうかが、大きな価値を持つ時代がきっと来る。このような土地が生まれれば、近郊の都市にとっても、また国というコミュニティ全体にとっても、大きな意味を持つはずだ”

同じ著者の『イシューからはじめよ』も領域横断的なキレのある論調のように感じた一方で、どこかそれだけではない独特な感じがあった。『シン・ニホン』は、AI×データ時代のあれこれについて400ページにわたって書かれた大著といえるが、その締めが上記のようなもの。凡人には到底わからないほどに頭が切れて、多方面に活躍されている方ではあるが、それを十分に踏まえたうえでこの著者はなかなかの人だな、と思ってしまった。
posted by 五人坊主 at 14:56| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2020年09月11日

夜のプレイリスト

NHKFMの番組、夜のプレイリスト、夕方6時台に再放送をしている。
週の担当者は、自身が影響を受けた音楽アルバムを5枚、1日1つずつ紹介していく。
今週の担当は西寺郷太氏、木曜日にプリンスの“パレード”を選択。

20代のときに一番聞いたポップミュージシャンがプリンスだった。
テレビで”I wanna be your lover"をうたっているのを見た・聴いたときは衝撃だった。
競泳パンツにハイヒール、上半身裸にジャケットというお決まりのいでたちだったかどうかまでは定かではないが、舞台上でくねくねしながらファルセットで歌う曲と映像が強烈だったー

狭義の倫理・道徳によって”人間”はどんどん卑小になってしまっているけど、本当はこんなもんじゃないんだぜ、と、プリンスは常に曲、パフォーマンスでツァラトゥストラを体現しているようだった。

西寺郷太氏が番組の最後で、「プリンスはギター、ベース、ピアノ、ドラムとどの楽器も努力の結果として超一流に演奏できる、しかし、一番すごいのは歌詞だ」というようなことを言っていた。”パレード”の最後の曲”Sometime it snows in April"を引き合いに、「4月に雪が降ったりするとプリンスのこの曲を思い出す」と。その歌詞の力というものを説いていた。
そして、複雑な家庭環境で育ちながら、世界的なスターとなったのちも故郷のミネアポリスで暮らしたプリンスは一体どういう思いでそこで暮らし続けたのか、といったようなことを語っていた。

アルバムの選定、そしてごく限られた時間の中でプリンスについて語る西寺さんの言葉が身に染みたひと時だった。
posted by 五人坊主 at 20:29| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2020年08月20日

ミナ ペルホネン?

「ミナ ペルホネン」ってどこかで聞いたような・・・、と思いながら、古本屋で、ビニールで梱包されて中身が見えない本『ミナ ペルホネン?』が気になっていた。「ミナ ペルホネン」は皆川明さんがやられている服飾を主とするデザイン会社(ブランド)だった。

文章、写真、デザイン、どれも素敵だった。

皆川さんは谷川俊太郎の詩集を持ち歩いて愛読しているらしい。短い文章がどれも素敵で心に響く。


”ちょうちょ

自分達の営みが他の生命の営みに欠かせないなんて素晴らしいなぁと思う。私達の仕事にもそんな可能性を持てたらうれしい。”


「perhonen(ペルホネン)」とはフィンランド語でちょうちょを意味するらしい。


”私は矛盾が好きだ

考えが振り子の様にゆれながら

答えは定まらない。

そこに思いをめぐらせているのが

私は楽しい。

物事も思考も動いているのが

好きなんだと思う。”

posted by 五人坊主 at 17:50| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする