2016年09月20日

GRIT やり抜く力

『やり抜く力(grit)』 この本の著者(アンジェラ・ダックワース)が研究によって突き止め、この本で記したいことを冒頭著者が簡潔に述べている。― 人生でなにを成し遂げられるかは、「生まれ持った才能」よりも、「情熱」と「粘り強さ」によって決まる可能性が高い -
gritを辞書でみれば、「根性」なんていう訳があるが、著者は「やり抜く力grit」を「情熱」と「粘り強さ」という2つの要因の合わさったものとして考えている。それにしても、そんなことは以前から言われていることだし、昨今はむしろ物事を成し遂げるためには「データ」や「情報」や「科学的手法」の方を重要視する傾向があるように思う。なぜ今更「根性論」みたいなことが言われだしているのか。(この本は海外で話題となっているようだし、おそらく日本でも近いうちに話題となることは間違いないように思う)

本を読み進めると、著者の功績は、いわゆる「根性論」みたいなものを、一つの「理論」といえるところまでもっていったことにあることがわかる。「理論とは説明だ。理論を打ち立てるには、膨大な量の事実と観察結果が必要であり、なにがどうなっているかを、もっと平易な言葉で説明しなければならない。だから理論というのは必然的に、複雑なものごとを極度に簡略化・単純化したものだ。」と前置きしたうえで、「偉大な達成を導く方程式」を2つ示している。

<才能×努力=スキル> <スキル×努力=達成>

ポイントは、才能は一度出てくるだけだが、努力は2回出てくるところにある。才能よりも努力の要素が2倍重要だと言えるし、たとえ才能の値が小さかったとしても努力で挽回できる余地が大いにあるということになる。

著者はグリットの強さをを測定可能なものとして、グリット・スケールなるものを用いて調査を行っている。グリット・スケールには、簡潔な質問が10項目あり、各項目で5段階評価をするようになっている。総合点を10で割って平均何点かでその人の情熱と粘り強さ(グリット)がどの程度のものかわかるという。
グリットスケールの適用例として、陸軍士官学校の例がある。アメリカの陸軍士官学校といえば全米のエリートが集まるところで、そこに入学することは難関中の難関のようだ。しかし、せっかく入学しても5人に1名は中退してしまうらしい。学業における成績、リーダーとしての資質、体力測定など、厳しい選考基準を通ることのできた一握りのエリート達のはずなのに。著者は、この陸軍士官学校で入学生にグリットスケールを用いた調査を行い、「訓練を耐え抜いた者たちと、脱落した者たちでは、スコアの差が如実に表れていることがわかった」とし、訓練を耐え抜けるかどうかを判断するうえで「"体力、学力、適正"の違いは問題にならない」と言い切っている。
陸軍士官学校の例のほか、大学進学者や中退者とグリッドスケールの値との相関、グリーンベレーでの調査例、スポーツ選手での例など様々な調査例を出して、"グリット"と"達成"との相関を明らかにしようとしている。この本では明記されていないが、陸軍士官学校ではおそらくグリットスケールは取り入れられているであろうし、マイクロソフトやグーグルなどの企業でも採用試験でこの種の評価を行っているようだ。日本の企業や学校でも、グリットスケールもしくはこの手の評価基準が取り入れられていくことは自然の法則のように確実だと思える。
最終章には「-人生のマラソンで真に成功する」「"やり抜く力"が強いほど"幸福感"もつよい」といった小見出しがあるように、なにもオリンピック選手を目指したり陸軍士官学校の訓練を耐え抜くためでなくとも、「グリット」を強くすることは誰にとっても有益だとしている。
本の中には、「グリット」を内側から伸ばす方法、外側から伸ばす方法などについても多く書かれている。この辺りは多くのハウツー本と大差ないといえるかもしれないが、心理学者、社会学者としての広範な知見に基づいて書かれており、参考になることが大いにあった。

― 「やり抜く力」が強いということは、
     一歩ずつでも前に進むこと。
     興味のある重要な目標に、粘り強く取り組むこと
     厳しい練習を毎日、何年間も続けること
     7回転んだら8回起き上がること

最終章にあったまとめ的なことを書いてみたが、書いてみるとあまりたいしたことは言っていないようにも見える。ただ、全体を通して言葉が力強く説得力のある内容になっている。

私は太宰の「自分には才能なんてない、痴の一念で(小説を)書いているんだ」という考えや、「やりたいこと、なりたいものがあれば10年間毎日やること。そうすればたいていのことはできるようになる。才能なんて問題にならない」ということを言っていた吉本隆明のような考えが自分は好きで、実際そういうつもりで今の仕事を続けてきた。だからこの「グリット」という考え方は非常に理解できるように思うし、より一般的になっていくことはいいことだと思う。
一方で、それがひとつの評価基準となって普及していくことにたいしてはある種の抵抗感がないわけではない、そんなもので測られて選考されたり振り分けられたりしてたまるか、というような。ただ、そういった問題はこの本の内容より当分先の課題であり、分野を問わずどんな新しい知見にも伴う課題であるように思う。

gromit-knits.jpg
※これは"グルミット"


posted by 五人坊主 at 16:50| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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